作品随想

 島国である日本にはたくさんの灯台があります。灯台の多くは、陸地が海に落ち込む断崖のようなところに凛として立っています。風雪に耐え、夏の炎暑に耐えながら長い年月、海を照らし続けてきました。私はその強さや寂しさを思うとなぜか人の生き方に重ねてしまうことがあるのです。

 私は信州の御牧ケ原にある小屋のようなアトリエでほとんどの作品を制作しています。この一帯は「日本で一番海に遠い町」といわれており、灯台に会いに行くためには何百キロもの旅が必要になります。私は2020年から4年間、延べおよそ9000㎞にわたり北海道と東北地方の海岸線をめぐり取材をし、灯台をテーマとした作品を制作していました。

 特に北海道の灯台が好きで、中でも能取岬灯台には何度も出かけ一番多く作品にしました。能取岬灯台は網走の北東にあり、広大な緑の原野に立っていますが、直下のオホーツク海は冬には流氷に閉ざされる厳しい自然の中で堂々とした姿で立っています。

 このホームページでは、スクリーン版画による作品を中心に灯台の魅力を紹介し、同時に作品を制作する楽しさや旅の楽しさなども感じていただけたらと願っています。